東洋医学・医療

肩甲下筋の特徴的な停止部

ローテータカフとして作用する筋肉の1つ、肩甲下筋。
この頃臨床でこの筋肉が原因筋となっている方に数名出会ったので復習しておきたい

肩甲下筋の解剖学的位置

<<肩甲下筋 Subscapularis(SSC)>>
起始:肩甲骨の肩甲下窩
停止:上腕骨の小結節
作用:上腕の内旋
神経支配:肩甲下神経(C.5-6)

前鋸筋と同じく、幅が広い筋肉では部位によってやや作用が変わってくるので図と併せてイメージを明確にしておきたい。
論文によっても異なるが、肩甲下筋は上中下の3線維に分けられ、上腕骨の肢位/位置によって作用が若干変わる。

中山裕子らの”肩甲骨面上肢挙上角度と肩甲下筋の筋活動の関係”によると、

肩甲下筋上部線維の活動は肩関節面挙上角度の増加に従い減少する傾向があり,
中部線維の活動は60度屈曲位が最も大きく,
下部線維の活動は120度屈曲位が最も大きいことが示された.
このことは上腕骨長軸に対しより垂直に近い線維が最も効率よく肩関節内旋運動に作用することを示唆していると考えられる.

とされている。

五十肩で挙上角度に問題がある方、特に80度前後で上がらなくなる方は多々おり、ここに肩甲下筋が影響していることも考えられる。

肩甲下筋の動的機能

肩甲下筋は肩関節の前方の安定性に大きく関与する。
先に話したように上〜下部線維があり、肩関節の動的安定機構としての役割は上部線維の方が強い。

肩関節障害がある方に対し、上部繊維を作用させた方が肩関節の安定化は図りやすい為、肩関節下垂位での内旋運動によって肩甲下筋の動的安定化を狙った筋力強化が起こせる。

多田裕一氏の”肢位の違いによる肩甲下筋の機能について”では、

「黄色チューブを用いて肩関節内旋10~15°を20 回実施する運動を、肩関節1st positionで内外旋中間位から(課題1)と外旋位15°から(課題2)にて行った。(中略)エクササイズを実施している様子では、課題1では上腕骨頭が前方偏位し易かったが、課題2では上腕骨頭が前方偏位し難かった。このため、課題2実施後に前方の安定性が増加したことも考えた。」

と述べている。

私見ではあるが、中間位であると、内旋位にもっていった際に上腕二頭筋の緊張が入り上腕骨頭の前方偏位が入るために課題1の上記結果へ繋がったものと考える。外旋位からのトレーニングがこの状態を改善させるのだろう。

肩甲下筋の構造的特徴

あまり知られていないが、肩甲下筋の停止部小結節よりもやや上下に広く位置している。
そもそも、肩甲下筋は起始部の幅がかなり広く、筋内に扇状に腱が存在していることも特徴的。これらがまとまり、停止部付近で腱となる。

基本的には小結節に停止、というのが一般的であるが、停止しているのは尾側3分の2ほどであり、さらにそこから上外側へ残り3分の1が付着している。

かなり上部までせり出しており、「舌部」と呼ばれる。これは上腕骨窩(結節間溝と関節軟骨の間)まで伸びている。

筋内の腱組織、停止部の広さから考えると“固定するための筋肉”としての色がより際立ってくる。
また、停止腱近くの上部は腱板疎部があり、下部は小円筋との接合はなく僅かな隙間が見られる。つまり、腱組織の上下は関節にとって弱い部分となりうる。

筋肉の位置的に鍼灸では対処しづらく、優先順位が下げられることもある筋肉だが、こういった特徴を理解しておくと無視し難い有能な筋であることが理解できる。

今日の学び

・肩甲下筋は肩関節の動的安定機構に重要であり、線維別に動きがやや異なる
・停止部は小結節よりも広くとられており、影響の大きさを伺わせる
・腱板疎部近くは関節として弱い部分となりうる