東洋医学・医療

胃の重要性②

胃経にて消化器の治療

胃の気の重要性は下合穴からも考えられる。
治療にも診断にも使える下合穴、これもなぜかすべて胃経に属している。

そして霊枢にはこうも書かれている。

足の三里下三寸に巨虚上簾、その下三寸に巨虚下簾、
大腸は巨虚上簾(上巨虚)に属す。小腸は巨虚下簾(下巨虚)に属す。
足の陽明胃脈で有る。大腸、小腸、皆胃に属す。
これ足の陽明である
ーー霊枢・本輸篇2

「胃は水穀の海。六腑の大源なり」と素問での記載もあるように、胃の治療をすることで消化器全般の治療としていたようだ。
前回も書いたように、胃は特別で力強いものだ。

三木成夫は著書の中でもこう唱えている。

「口ー肛」の器官は、植物の生過程のすべてである。「栄養ー生殖」の機能に携わるところから、それは植物機関と呼ばれ、これに対し、「頭ー尾」の器官は、動物の生過程にしか見られない。「感覚ー運動」の機能に携わるところから、それは動物機関と呼ばれる。
ーー『生命形態学序説』三木成夫 うぶすな書院刊

三木成夫は芸術的とまで言われる発想と観点を持った解剖・生理学者。大好き。
六腑の太源であり、かつ生命に必要な植物機関ともつながりがありそうだ。

腸管にまで話を伸ばせば、発生学的には口ー肛の発生の中で甲状腺もここから生まれている。
人間の活動・生殖に関わる大切な内分泌機関の甲状腺すらも口ー肛機関と関連があるとすれば、それを統べる胃の重要性は計り知れない。

五行論における胃

だが不思議だ。胃は五行論でいえば、陰陽のループの中の1つとして取り込まれているただの1機関。(そもそも五行論自体がこじつけである可能性もあるのだが、それはまた別の機会に。当時の勢力図との関連で出来上がった、との一説もある)

しかも陰主陽従が主とした考えの中で、胃はさらに脇役になりかねない。だが、五行論の中でも栄養を「生み出す」作用があるのは土経の脾胃のみだ。いくら力強くとも、精や血を蔵していても、新しいものを取り込まねば生きてはいけない。新しいものを作れるのは脾胃であり、太極たる所以だ。

また、私が治療に取り入れている長野式・kiiko styleではまず胃の気を補すことを重んじている。なぜ胃の気か。

五行という言葉の語源を辿るとこのようになる。

中央があることで行の道ができ、天地が交通でき、五行となるのだ。
胃の気を補して、自然界との調和を整えてから、正五角形の五行を整える。そこで初めて個人の証が決定される。

それ単体の重要性だけでなく、全体の調和として胃は一役買っている。
同じく五行論でいえば、季節。脾(土)は土用とされており、これは季節の移り変わる1週間のこと。

まるで引力のように引きつ引かれつ、自然界と自身との調整をしてくれている。
ここで胃の気が弱いと季節の移り変わりに弱く、体調を崩しやすくなる。
天人合一論かのように、自然と、宇宙と、人とのリズムを調整してくれているのが胃の気なのだ。

衝脈は十二経の海で、血海。その輸穴で上では大杼、下では巨虚上簾、巨虚下簾にでる。胃は水穀の海で、その輸穴は上では気衝、下では足の三里に出る。
ーー『霊枢・海論33』

脾は胃のために、津液をめぐらすことを主る
ーー『素問・厥論45』

脾、病めば胃のために、その津液をめぐらす能わず
ーー『素問・太陰陽明論29』

本日の学び

・胃の気は栄養と生殖を司る、生命機関(植物機関)
・自然界と人との調和、その重要性は古典でも五行論でも唱えられている